こどもたちが安心して過ごせる居場所をつくるために、支援の現場では日々さまざまな配慮が重ねられています。
けがや事故への対応、感染症対策、個人情報の管理、SNSでのトラブル、地域との関係づくり。
どれも大切だと分かっていても、日々の活動に追われる中で、すべてを十分に整理しきることは簡単ではありません。
FM那覇の番組「Supporters’ Web Academy みんなで描こう支援のミライ」第32回放送が、2026年8月19日に配信されました。
今回の放送では、Supporters’ Web Academy 基礎講座 Lesson10「こども支援拠点のリスク管理」をテーマに、一般社団法人みんなのももやまこども食堂の福里さんとともに、こども支援の現場で考えておきたいリスクや、日々の備えについて振り返りました。
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「起きないようにする」と「起きた後に備える」
今回の放送でまず確認したのは、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの違いです。
リスクマネジメントは、事故やトラブルが起きる前に、その可能性をできるだけ減らすための備えです。
一方で、クライシスマネジメントは、実際に何かが起きてしまったときに、被害を最小限に抑えるための対応を指します。
こども支援の現場では、たとえば次のようなリスクが考えられます。
- けがや事故
- 感染症
- こども同士のトラブル
- SNSや写真投稿に関する問題
- 個人情報の漏えい
- 支援者・ボランティアとの関係
- 地域住民との関係
大切なのは、「何か起きたらどうしよう」と不安になるだけではなく、どのようなことが起こり得るのかを具体的に考え、備えておくことです。
日本版DBSから考える、こどもと関わる人のリスク管理
放送の中では、福里さんからの質問をきっかけに、いわゆる日本版DBSについても話題になりました。
日本版DBSは、こどもと関わる仕事に就く人について、性犯罪歴の有無を確認する仕組みとして議論されている制度です。背景には、こどもが安全に過ごせる環境を社会全体で守っていく必要性があります。
一方で、制度を実際に運用していくうえでは、さまざまな論点があります。
たとえば、該当する記録が確認された場合に、こどもと直接関わらない部署へ異動できるのか。小規模な団体では、そもそも異動先を用意することが難しい場合もあります。
また、こどもの安全を守ることと、個人のプライバシーや職業選択の自由をどのように考えるかという課題もあります。
こども支援の現場は、限られた人数で運営されていることも少なくありません。
だからこそ、性犯罪に限らず、どのような人に関わってもらうのか、どのように人材を採用し、育て、支えていくのかも、大きなリスク管理のひとつだと感じました。
マニュアルは大切。でも、それだけでは守りきれない
リスク管理というと、まず「マニュアルをつくらなければ」と考える方も多いかもしれません。
もちろん、緊急時の連絡先や事故発生時の対応手順、個人情報の取り扱いルールなどを明文化しておくことは大切です。
しかし放送では、「マニュアルがない」「あっても読まれていない」という現場の実感も共有されました。
大事なのは、ただ書類を整えることだけではありません。
- 起こりやすさはどのくらいか
- 起きたときの影響はどのくらい大きいか
- どこまで事前に防げるか
- 起きたとき、誰に相談するか
このように、リスクを発生可能性と影響度の両面から考える視点が必要です。
すべてのリスクに完璧に備えることは難しくても、優先順位をつけて考えることで、現場として取り組むべきことが見えやすくなります。
SNSや写真投稿は、現場だけで管理しきれない難しさがある
今回の放送で特に印象的だったのが、SNSや写真投稿に関するリスクです。
こども自身がスマートフォンを持っている場合、支援者がすべての撮影や投稿を把握することはできません。
誰かが写り込んでいないか、背景から場所や名前が分からないか、公開範囲がどこまで広がっているか。こうしたことを完全に管理するのは、とても難しいのが現実です。
だからこそ、単に「撮影禁止」「投稿禁止」とするだけではなく、何が危ないのかをこどもたち自身にも伝えていくことが大切です。
たとえば、
- 自分以外のこどもが写った写真は投稿しない
- 施設名や学校名、名札などが分かる背景に注意する
- 友人だけに見せているつもりでも、外に広がる可能性があることを伝える
- 困ったときに大人へ相談できる関係をつくる
といった日々の関わりが、リスクを減らすことにつながります。
こどもを守るために、こどもの行動をただ制限するのではなく、こども自身が安全を考えられるように支えていく。
そのバランスが、現場ではとても大切なのだと感じました。
放送では、ボランティアやアルバイトスタッフに、こどもや家庭の情報をどこまで共有するかという話も出ました。
たとえば、ある家庭に心配な状況があり、「このこどもの様子を少し気にかけてほしい」と伝えたい場面があります。
一方で、その情報を必要以上に広げてしまうことで、こども本人を傷つけたり、プライバシーを侵害したりするリスクもあります。
情報共有は、多ければ多いほどよいわけではありません。
大切なのは、その人がどのくらいこどもと関わるのか、支援のために本当に必要な情報なのかを考えることです。
深く関わるスタッフには共有するけれど、短時間だけ関わるボランティアには共有しない。そうした判断が必要になる場合もあります。
支援に必要な情報を共有すること。
同時に、こどもや家庭の尊厳を守ること。
その両方を考えながら、現場ごとに丁寧に判断していく必要があります。
日々の対話が、いちばん身近なリスク管理になる
今回の放送を通して、改めて大切だと感じたのは、日々のコミュニケーションの土台です。
「最近、あの子の様子が少し気になる」
「この対応でよかったのかな」
「この情報は、どこまで共有していいのだろう」
そうした小さな違和感や迷いを、職員同士で話せる環境があるかどうか。
これは、マニュアルと同じくらい、あるいはそれ以上に大切な備えかもしれません。
事故が起きたときも、すぐに責任者へ相談できる。
判断に迷ったときに、一人で抱え込まずに話せる。
日々の会話の中で、こどもや家庭の変化に気づける。
こうした関係性があることで、深刻なトラブルになる前に対応できることもあります。
リスク管理は、特別なときだけ行うものではありません。
日々の対話や共有、ちょっとした相談の積み重ねそのものが、こどもたちの安心につながっていくのだと思います。
おわりに
こども支援の現場におけるリスク管理は、こどもを管理したり、活動を窮屈にしたりするためのものではありません。
むしろ、こどもたちが安心して過ごし、支援者も迷ったときに相談しながら関われるようにするためのものです。
すべてを完璧に防ぐことはできません。
だからこそ、何が起こり得るのかを考え、必要なルールを整え、日々の対話を重ねていくことが大切です。
こどもを守ることと、こどもの自由や主体性を尊重すること。
情報を共有することと、プライバシーを守ること。
現場では、いつもその間で判断が求められます。
答えを一つに決めきれないからこそ、支援者同士で考え続けること。
その姿勢そのものが、こども支援の現場を支える大切な力になるのではないでしょうか。
◾ 動画のご案内
🎙【タイトル】
Supporters’ Web Academy みんなで描こう支援のミライ(2026年8月19日)
📌今回の放送では、「こども支援拠点のリスク管理」をテーマに、日本版DBS、SNS投稿、個人情報の共有、日々のコミュニケーションの大切さなどについて、現場での実感を交えながら考えました。
Supporters’ Supporterでは、こども支援団体向けのコンサルティング、スーパーバイズ、研修のご相談も随時承っています。
ご関心のある方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
こども支援オンライン学習プラットフォームSupporters‘ Web Academyは、こども支援者に無料で提供しています。
この取組は、多くの方のご寄付によって支えられています。学びたい支援者が安心して学び続けられる環境づくりに、ぜひご協力ください。
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