こどもの居場所では、来てくれた瞬間だけでなく、帰り際の関わり方もとても大切です。
活動中は楽しそうにしていたのに、帰る時間になると急に表情が曇る。
「まだ帰りたくない」と言って動かなくなる。
反対に、あまり話せないまま帰ってしまい、「今日、楽しめたのかな?」と気になる。
こうした場面は、こども支援の現場ではよくあります。
帰り際は、その日の関わりの“最後の印象”が残る時間です。ここで大切なのは、長く話し込むことではありません。
こどもが「今日ここにいてよかった」「また来てもいいんだ」と感じられるように、短く、あたたかく、次につながる声をかけることです。
帰り際のひと声は、こどもにとって「次も来たい」と思える小さなきっかけになります。

帰り際は、こどもにとって「切り替え」の時間
帰り際にこどもが不安定になりやすいのは、単に「帰りたくない」からだけではありません。
楽しい時間から家に帰る。
遊びを途中で終える。
安心していた場所から離れる。
スタッフや友だちとの関わりがいったん終わる。
こどもにとって、帰り際は小さな「切り替え」の時間です。
大人でも、楽しい時間が急に終わったり、集中している作業を突然止められたりすると、少し気持ちが乱れることがあります。こどもならなおさら、気持ちの整理に時間がかかることがあります。
だからこそ、帰り際は急かすだけでなく、気持ちを切り替えるための余白をつくることが大切です。
たとえば、いきなり、
「はい、もう帰るよ」
「早く片付けて」
「もう終わり!」
と伝えると、こどもは気持ちが追いつきにくくなります。
一方で、
「あと5分でおしまいだよ」
「このゲームが終わったら帰る準備をしようね」
「あと1回やったら片付けようか」
と少し前に伝えると、こどもは終わりを受け止めやすくなります。
帰り際の支援は、特別なことをするというより、終わり方を少し丁寧にすることから始まります。
「今日のよかったこと」をひとこと返す
帰り際には、その子の今日をひとことで振り返る声かけが効果的です。
ここで大切なのは、大きな成果を見つけようとしすぎないことです。「すごいこと」を言わなくても大丈夫です。
たとえば、
- 「折り紙、たくさん作ったね」
- 「カードゲーム、集中してたね」
- 「片付けのとき、手伝ってくれて助かったよ」
- 「最初は緊張してたけど、途中から少し笑ってたね」
このように、その子が今日そこにいたこと、やってみたこと、少しでも動いたことを言葉にします。
こどもは、自分の行動を大人が見てくれていたと感じると安心します。「ちゃんと見てもらえていた」という感覚は、次に来る理由になります。
ただし、無理にほめようとしすぎる必要はありません。
あまり話せなかった子に対して、実際には緊張していたのに「今日はすごく楽しそうだったね」と言うと、本人の感覚とずれてしまうことがあります。
そんなときは、
「今日は来てくれてありがとう」
「ここで過ごしてくれてうれしかったよ」
「また会えたらうれしいよ」
くらいで十分です。
ポジティブに盛るより、事実をやさしく返す。これが、帰り際の声かけでは大切です。

「また来てね」は、押しつけない言い方にする
帰り際には、つい「また来てね」と声をかけたくなります。
もちろん、それ自体はあたたかい言葉です。ただ、言い方によっては、こどもにとって少しプレッシャーになることがあります。
たとえば、
「絶対また来てね」
「次も来るよね?」
「今度はもっと話そうね」
と言われると、まだ場に慣れていない子や、次回来られるか分からない子は、返事に困ってしまうかもしれません。
帰り際の声かけは、約束を取りつける時間ではありません。「来なきゃいけない場所」ではなく、「来てもいい場所」だと伝える時間です。
そのため、少しゆるく誘うくらいがちょうどいいです。
- 「また来られたら、続きをしようね」
- 「次に会えたら、また一緒にやろう」
- 「来られる日があったら、また顔見せてね」
このように、こどもに選ぶ余地を残すと、安心感が生まれます。
「次も来なきゃ」ではなく、「また行ってもいいんだ」と思えること。
それが、「また来たい」につながります。
帰りたがらない子には、気持ちを受け止めてから区切る
帰り際に、「まだ帰りたくない」と言う子もいます。
このとき、スタッフ側も時間が迫っているので、つい「もう終わりだから」「早く帰るよ」と急かしたくなることがあります。
でも、こどもが帰りたがらないときは、まずその気持ちを一度受け止めることが大切です。
「まだ遊びたかったね」
「続きが気になるよね」
「楽しかったから、終わるのが嫌なんだね」
そのうえで、区切りを伝えます。
「今日はここまでにしよう」
「続きはまた今度しようね」
ポイントは、気持ちは受け止める。終わりの線は大人が穏やかに引くことです。
受け止めることと、何でも延長することは違います。こどもの気持ちを否定せずに、「今日はここまで」と伝えることで、安心できる終わり方になっていきます。
一方で、帰り渋りが強かったり、帰る時間になると極端に不安そうになったり、「家に帰りたくない」と繰り返し話したりする場合は、単に遊びを終えたくないだけではない可能性もあります。家庭で安心できない状況がある、家に帰ること自体に不安がある、あるいは虐待や不適切な関わりのサインが背景にあることも、支援の現場では考えておきたい視点です。
もちろん、帰りたがらない様子だけで何かを決めつける必要はありません。けれども、気になる言動が続く場合は、スタッフ間で共有し、記録を残し、必要に応じて関係機関や専門職につなぐことが大切です。
こうした「気になるサインの見立て」や「虐待に対する支援者としての初動対応」については、弊団体の運営する無料のeラーニングプラットフォーム Supporters’ Web Academy( https://supporterssupporter.com/ )でも学ぶことができます。日々の関わりの中で、「これは少し気になるな」と感じたときに、支援者が一人で抱え込まないための学びとして活用してみてください。
そのまま使える声かけ例
帰り際の声かけは、長くなくて大丈夫です。短く、自然で、押しつけない言葉の方が、こどもには届きやすいことがあります。
楽しく過ごせた子に
- 「今日は楽しそうだったね。またできるといいね」
- 「カードゲーム、盛り上がったね。次も続きできたらいいね」
- 「最後までたくさん遊べたね。また一緒にやろう」
あまり話せなかった子に
- 「今日は来てくれてありがとう」
- 「ここで過ごしてくれてうれしかったよ」
- 「また会えたらうれしいよ」
帰りたがらない子に
- 「まだ遊びたかったね」
- 「続きはまた今度しようね」
- 「今日はここまでにしよう。ここで待ってるよ」
次回につなげたい時
- 「次は工作の日だよ。来られたら一緒にやろう」
- 「今日の続き、またできたらいいね」
- 「今度来たら、あの本の続きを読もうか」

明日からの一歩
「また来たい」と思ってもらうために、明日から一つだけ意識するなら、帰り際にその子の今日をひとこと返すことです。
「来てくれてありがとう」
「今日はここまでできたね」
「また会えたらうれしいよ」
たった一言でも、こどもにとっては「自分のことを見てくれていた」と感じられるきっかけになります。
特別なイベントや、大きな成功体験が必要なわけではありません。
帰る直前の短いやりとり。
あたたかい表情。
押しつけない「またね」。
その小さな積み重ねが、こどもにとっての安心できる居場所をつくっていきます。
Supporters’ Supporterでは、こども支援団体向けのコンサルティング、スーパーバイズ、研修のご相談も随時承っています。
ご関心のある方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。こども支援オンライン学習プラットフォームSupporters‘ Web Academyは、こども支援者に無料で提供しています。
この取組は、多くの方のご寄付によって支えられています。学びたい支援者が安心して学び続けられる環境づくりに、ぜひご協力ください。
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