部活の地域展開どう進める?ー若狭公民館を拠点とした地域クラブ活動シミュレーションから見えたこと

部活動の地域展開に関する調査報告のアイキャッチイラスト

学校部活動の地域展開が進められる中で、スポーツに比べて、文化部、特に吹奏楽部の地域展開はまだ十分に議論が進んでいるとは言えません

吹奏楽は、専門的な指導者の確保に加え、楽器の管理、消耗品費、修理費、運搬、練習場所の確保など、活動を続けるために多くの条件が必要です。

単に「学校から地域へ移す」と言っても、誰が運営し、誰が費用を負担し、こどもたちの活動機会をどう守るのかという課題があります。

こうした背景のもと、一般社団法人琉球フィルハーモニックは、那覇市若狭地域において、若狭公民館を拠点とした吹奏楽の地域クラブ活動シミュレーション事業を実施しました。Supporters’ Supporterは、本事業に調査協力として関わり、アンケート調査や報告書作成を通じて、今後の地域展開に向けた課題や解決方法について一緒に検討しました。

一般社団法人琉球フィルハーモニックHPはこちらから→

https://ryukyuphil.org

本事業の報告書はこちらから→

https://storage.googleapis.com/studio-design-asset-files/projects/xmaZmJ4DqR/s-1x1_e3af91c5-cfc0-46d2-b65d-dca2d9160bd6.pdf

琉球新報に取り上げていただきました→

https://ryukyushimpo.jp/education/entry-5237855.html


目次

1.事業への思い・背景

「部活動の地域展開」という言葉は広がりつつありますが、実際にどのような形で進めるのかについては、まだ具体的な議論が十分に進んでいないのが現状です。

特に吹奏楽部は、他の活動と比べても運営の難しさがあります。

  • 楽器代が高額になりやすい
  • 楽器に関する消耗品が継続的に発生する
  • 楽器の修理・メンテナンス費がかかる
  • 大型楽器の運搬が必要になる
  • 練習場所の確保が難しい
  • 各楽器を指導できる専門人材が必要 など

こうした要素を考えると、地域展開は決して簡単ではありません。

だからこそ今回の事業は、制度の方向性を語るだけではなく、「実際に地域で吹奏楽部を支えるとしたら、何が起こるのか」を具体的に試すシミュレーションとして大きな意味を持っています。

実際に取り組んでみることで、こどもたちにとっての新しい学びや交流の可能性が見えました。一方で、移動の負担、家庭の事情による参加しやすさの違い、講師謝金や運営費の確保、連絡調整を担う人材の必要性など、制度として整えるべき課題も明らかになりました。


2.事業の概要

本事業は、本事業は、那覇市における音楽系部活動の地域移行について、現場の実態や課題を把握しながら、今後のモデルケースを模索することを目的に実施されました。

まず令和6年度には、沖縄県・那覇市における中学校の吹奏楽部を中心とした音楽系部活動について、学校関係者・地域関係者・音楽指導者などへのヒアリングとアンケート調査を行いました。

調査では、学校長、吹奏楽部顧問、音楽専科教員、地域団体職員、地域の音楽指導者などから、部活動の地域移行に関する期待や不安を聞き取りました。加えて、那覇市内の吹奏楽部顧問や地域団体構成員へのアンケートも実施し、現場で感じられている課題を整理しました。

そこから見えてきたのは、主に次のような論点です。

  • 教員の休日部活動指導や専門外指導の負担
  • 楽器の管理・修繕・運搬など、吹奏楽ならではの課題
  • 活動場所、財源、指導者の確保
  • 学校・地域・保護者・指導者をつなぐ調整役の必要性
  • 家庭の状況や地域差によって参加機会に差が生まれないための仕組みづくり

こうした事前調査を踏まえ、若狭公民館を拠点とした地域クラブ活動のモデルケースを検討し、那覇市立那覇中学校と上山中学校の吹奏楽部生徒を対象に、2校合同の地域クラブ活動シミュレーションが行われました。

活動は学校と連携しながら、琉球フィルハーモニックが運営を担い、専門的な知見を持つ音楽指導者による練習や、吹奏楽コンクール、地域イベントへの出演などが実施されました。

主な取り組みは、次のような内容です。

  • 若狭公民館を拠点とした合同練習
  • 那覇中学校・上山中学校の2校合同での活動
  • 専門指導者による演奏指導
  • 吹奏楽コンクールや地域イベントへの参加
  • 生徒・保護者・関係者へのアンケート調査
  • 学校・地域・指導者・運営団体へのヒアリングと課題整理

今回の事業は、単に地域クラブ活動を試すだけではなく、事前に現場の声を丁寧に聞き取り、その課題を踏まえたうえでモデルケースを考えるという点に特徴があります。


3.Supporters’ Supporterの取り組み

Supporters’ Supporterは、本事業において調査協力を行いました。

具体的には、生徒・保護者への事前・事後アンケートに加え、学校関係者、音楽指導者、公民館関係者、管理団体への調査を実施し、事業の成果と課題を整理しました。

調査から見えてきた主な成果は、以下の通りです。

  • 専門指導による演奏技術の向上
  • 他校や異年齢のこどもとの交流
  • 地域イベントへの参加によるこどもたちの成長
  • 教員の休日部活動指導の負担軽減
  • 公民館など地域資源の活用可能性

実際に、生徒からは「大人数で合奏できたことが楽しかった」「専門の先生に教えてもらえて自信がついた」といった声が寄せられました。保護者からも、こどもが活動の様子を楽しそうに話すようになったことや、音楽への関心が高まったことが評価されています。

また、学校関係者からは、休日の部活動指導から解放されたことで、教員の業務負担が軽減されたという声もありました。新聞記事でも、生徒・保護者の8割以上が満足と回答し、学校関係者や指導者の約7割が地域展開に前向きだったことが紹介されています。

一方で、調査からは、今後に向けた課題も見えてきました。大きく整理すると、次の2つです。

①地域クラブ活動を続けるための運営面の課題

地域で活動を継続するためには、講師謝金や活動費などの財源をどう確保するか、学校・地域・保護者・指導者をつなぐコーディネーターをどう配置するかが重要になります。

特に吹奏楽の場合、楽器の修理、消耗品、大型楽器の運搬など、活動を支えるための費用や調整が多く発生します。こうした運営基盤が整っていなければ、地域クラブ活動を継続的に行うことは難しくなります。

②参加機会をどう保障するかという課題

家庭の経済状況や住んでいる場所によって、参加できる子と参加しづらい子が生まれないようにする視点も欠かせません。

送迎や交通費の負担、楽器の運搬、活動場所までの距離、情報共有の仕組みなどを整えなければ、地域展開がかえって体験格差を広げてしまう可能性もあります。

加えて、調査では、生徒から「自分たちの意見を言う場がほしい」「急に決まったことを伝えられるだけだと、自分たちが部活をやっている感じがしない」といった声もありました。

これは、運営面や参加機会の課題とは少し異なりますが、地域クラブ活動の質を考えるうえで重要な視点です。地域クラブ活動が、単に大人が用意したプログラムに参加する“習い事”のようになってしまうと、部活動が持っていた「自分たちで活動をつくる経験」が失われる可能性があります。

そのため、Supporters’ Supporterでは、琉球フィルハーモニックとともに、今回の結果をもとに今後の事業の方向性を検討し、報告書として整理しました。

報告書では、活動の成果だけでなく、今後に向けた論点として、次のような点をまとめています。

  • 持続可能な運営体制をどうつくるか
  • 講師謝金や活動費などの財源をどう確保するか
  • 家庭負担や地域差による体験格差をどう防ぐか
  • 学校・地域・保護者・指導者をつなぐコーディネーターをどう配置するか
  • 地域クラブ活動の中で、こどもたちの主体性や参画の機会をどうつくるか

これらは、吹奏楽部だけでなく、今後の部活動の地域展開全体を考える上でも重要な視点です。


4.今後に向けて

今回の事業から見えてきたのは、学校の部活動のフォーマットを、そのまま地域資源で再現できるわけではないということです。

学校には、顧問の先生、校内の設備、日常的な生徒との関わり、学校行事との接続など、学校だからこそ成り立ってきた仕組みがあります。一方で、地域クラブ活動には、学校とは異なる運営体制、費用負担、移動、連絡調整、地域資源の活用といった、地域ならではの課題があります。

つまり、部活動の地域展開を進めるには、学校の仕組みをそのまま外に移すのではなく、地域で実施するからこそ生じる課題を整理し、その課題を踏まえて新しい活動の形を考えていくことが必要です。

特に、次のような環境整備が重要になります。

  • 送迎や交通費の負担をどう軽減するか
  • 経済的に厳しい家庭のこどもも参加できる仕組みをどうつくるか
  • 参加費や消耗品費をどう設計するか
  • 保護者・学校・運営団体の情報共有をどうスムーズにするか
  • 活動を支えるコーディネーターや運営体制をどう確保するか

こうした環境整備が不十分なまま地域展開を進めると、家庭の経済状況や住んでいる地域によって、こどもたちの体験機会に差が生まれてしまう可能性があります。

そのうえで、こどもたちにとって意味のある活動にしていくためには、専門的な指導を受けられることに加えて、仲間と出会い、地域とつながり、自分たちで活動をつくっていく経験も大切にしていく必要があります。

部活動の地域展開は、学校の働き方改革だけでなく、こどもの体験の機会を、地域全体でどう保障していくのかという問いでもあります。

Supporters’ Supporterでは、今回の調査・報告書作成を通じて得られた学びをもとに、今後も、こどもたちが家庭環境や地域差に左右されず、多様な体験に出会える仕組みづくりについて考えていきます。

学校、地域、専門家、行政、保護者、そしてこどもたち自身。
多くの人が少しずつ力を持ち寄ることで、これからの部活動や地域クラブ活動の形は、もっと豊かに広がっていくはずです。


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